Shinjiの写真

2001/09/05 (��) 04:34 | Arts Vues, Le Pont

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彼の写真を見ていると、写真家としてよりも画家としての視線が、写す対象物に強く鋭く直線的に向けられているのが即座に見てとれる。写す(写真)という行為が、描く(絵画)という行為に置き換えられていると言っても良いだろう。それも当然のこと、彼は画家を目指す学生である。写真芸術を技術論中心でとらえるという危険な落とし穴を、画家の彼は容易に飛び越えて、自身の表現の生な方向性を弱めることなく写真を撮っているのがなんとも好ましい。十七世紀のフランドル派の静物画を思い起こさせるようなこれらの写真は、創作という作者の巧妙な作為によって、ただの物体は一変させられ、そのまま作者の心情景に点在する孤高なる時間の断片を、光とともに凝縮させている。日常のありきたりの物体が、ひとつの迷宮の入り口となり、この作者のイマジネーションの世界へと導いている。絵画制作の過程で撮られた写真とは言い切れない、岩本晋司のひとつの世界が存在する写真である。現代の写真界の騒々しい出来事などに、決して歩調をともにすることなく、やはり画家の創り出す写真としての、見事なアマチュアリズムをいつまでも保持していってもらいたいものである。

岩本晋司
1977年 三重県生
1993年 画家・野村 卯(しげる)に師事
1997年 渡仏
1998年 画家・Alexei MINAKOVに師事
パリ在住