フレデリック・ダンス
早朝のコーヒーカップと新聞、夜のカウンターに並ぶボトルとグラス
お茶に浸された中国製の紙、フルーツの物語の印刷された紙
フレデリックの作業は、冒険そのものだ
版画から絵画、モノタイプからライノタイプまで
どんな素材、材料にも、どんな形、大きさにも彼女は挑む
そして彼女独自のスタイルを探し、見つけ出す
ユーモアと愛に満ちた、繊細なダンスの世界がそこにある
彼女のつくったフルーツの惑星も
どうぞゆっくり彼女の世界をお楽しみ下さい
ヴァレリ-・プロキュルー・マルシャル
プロデユーサー、友人、コレクタ-
何かに熱中できるということは、それだけで幸運だ。ひらめきや特別な機会があると、私は銅、木、リノリウムを彫りにかかる。揺るぎない覚悟をもって絵と文を組み合わせ、印刷芸術の提供する無限の可能性を探る。料理人のように配合し、想像し、新しい方法を試してみる。その時の私は、もちろん遊び楽しんでいる。私の絵は、見る人に幸せ、安らぎ、喜びをもたらすためにある。私の作品の基本は、色にあふれていることだ。
出来上がりとは逆に作る木版には、誤りを避けるための厳密さが要求される。が、それ以外、下書きをすることはまずない。ひらめきは周りにある物、そこに置いてある果物、古本屋で見つけた本、思い出、雰囲気などからもやってくる。そして辛抱強く彫った型を刷る。その瞬間は魔法のようだ。印刷術とは、何と巧妙なのだろう。同時に至る所で多数の複製を可能にしたすばらしい手段だ。ここでもあそこでも、同時に跡を残すことができる。自分のためにも一枚。長い間かかってなんとか入念に作り上げたこの作品が、ここにもあそこにもあると知るだけで嬉しくなる。
どんどん刷られてゆく作品を見ていると、私の喜びも倍増する。しかし時には方向転換し、単一作品やコラージュをてがけ、一つしかないものに戻ってみる。そして、それが次の版画の土台になるかもしれないと心がはずむ。
まさに終わりのない世界だ。驚きと喜びに満ちた、インクとガソリンの匂いのする、銀色のシリンダー印刷機や手触りのなめらかな紙に囲まれたこの世界。与えることを惜しまないその大地は広大で、未踏の地も残っている。もっと遠くへ冒険に出たいという思いにかき立てられる。
フレデリック・ダンス
版画家