エボリューション

2004/10/17 (��) 10:10 | Le Pont, Passion

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「モンドリアンの仕事のエボリューション(進化)を考えるだけで、私は大きな喜びを感じる」ダヴィッド・シルヴェストル、美術批評家。

「エボリューション(ラテン語でエヴォルシオ、展開)。少しずつ継続的な変化(『プティ・ラルース』)

子どもの頃から、私はずっと絵を描いて来た。やがて私は、自然をコピーしようとすることは不可能なことで、大して意味がないことに気づいた。自然を出発点にしながら、それを解釈し、再創造しなければならない。このことをはっきり意識して以来、私は自然現象にヒントを得た構想を画面上に表現しようと努めた。何年も前から、「雲」(写真1)、「地平線」、「観想」、「逆光」、「降水」、「錯綜」(写真2)シリーズなどで〃風景の基本要素〃という包括的なテーマを研究してきた。

絵の大きさはオーソドックスなもので、支持体にはイゾレル(木材を原料とした硬質繊維の板)を使い、その上から油で描いた。下絵には小さなサイズを用いている。パステルや油性パステルも描く。1990年以後の新しいシリーズでは、従来のサイズを越える額入りの大きなものを手がけているが、私はこれをより広い環境の抜粋として考えている。
絵によって、単に平面だけでなく、見る角度や距離を変えると、全く別の様相を呈する多面体(写真3)のようなものを表現できるかもしれない。また、条件を少し変えると、動きが表現できる可能性もある。光線、動き、奥行きのイリュージョンが、常に私を魅了した。

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私は画中における修正を避け、意図的にコントロールしながら筆を動かす。これは東洋の遺産と言える。油絵では、最初の筆跡がまったく分らなくなるほど訂正がきくが、伝統的な東洋の線描画では、訂正は不可能である。バイタリティーやフレッシュな感覚を生みだすには、色を重ねずに、並置すればよい。油絵では、色彩の組み合わせ、絵具の塗り具合 : 薄塗り、透明な塗り、厚塗りなど、様々なコントラストを用いて、奥行きのイリュージョンや距離の曖昧さを表現することができる。こうして、絵の中の前景と背景を逆転することさえ可能になる。
これらの考えは次第に進化し、現在ではポジティブ・ネガティブの概念で捕らえている。先ず、紙に画像を手で描き、それをコピーしてネガティブ(写真4)とし、次に透明な支持体を使って絵の後の壁に絵を同化させる。こうして壁は絵と完全に一体となり、ここにもう一つの視覚的バリエーションが誕生する。第一段階で、ネガティブの要素を切り取り、それらをポジティブとして第二の支持体の上に再構成する。この作品に「第二のネガティブ」(写真5)という題をつけた。次の段階で、透明な二枚の支持体の間を少し離して二枚の絵を重ねた(写真6)。これにより、さまざまなビジョンが得られた。このプロセスを継続し、今度は3枚の透明な支持体に一枚の絵の切断した部分を張り分け、これを一枚の絵として仕上げた(写真7)。できるだけ注意して正確に切断し、貼り付けをするが、それでもやはり多少の変化や切り落としが生じてしまう。しかし、私の意図は、最初の絵にできる限り忠実に再現するというところにある。この技法は複雑で、時間がものすごくかかるものであるが、探索する概念と技法がぴったりしているので、今のところこの方法を続けている

ロバート・チャンバー

1941年イギリスに生まれる。
パリとクレルモン・レロー(ラングドック地方)にアトリエを持つ。
イギリスとフランスで多くの展覧会を行う。
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