Kaléidoscope

著者が日々の生活でふと想う事をつれづれなるままに書き記すエッセイです。

自然の言葉 私の作庭法

2001/09/05 (��) 01:58 | Kaléidoscope, Le Pont

自然の言葉 私の作庭法 どのように庭園を造るか?
私に提出されたこの問いは、どのように風景にはたらきかけるかということを考える機会を与えてくれた。おかげで造園家という職業について以来、私は様々な事を身に付け、今は無意識的とさえ言える行動や態度になっている。

造園の仕事は、次の四段階に分けて考える事ができる。

  • 第一印象と「受注条件明細書」
  • 計画の作成
  • 実際における造園
  • 庭園のメンテナンス

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第一印象と「受注条件明細書」

第一段階では、コンテイスト、依頼人の文化的環境、期待、予算を明確にし、さらに互いによく理解し合っているかを確認しておくことが重要である。そして、庭園において、すべての提出書類や点検する必要のある諸要素を考慮した上で、「受注条件明細書」を作成しなければならない。この時、庭園、家、眺望、向い側のもの、樹木など具体的環境およびすべての注意すべき要素をよく観察しておく必要がある。

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計画の作成(庭園の概念的特徴を明白にする。)

一般から特殊へと進みながら大筋を引き出す(依頼人はとにかく細かい事に時間を取りがちなので注意を要する)。

三次元のイマジネーションを働かせながら、現にあるものを利用することに努め、最初から限定しないで、あらゆるオプションを検討してみる。依頼人はよく「そのような事は考えたことがなかった」と口にするが、それは、ある一定の場所で、そこにある事物に合わせて生活していると、それを自発的に白紙に戻して考える事がないためである。このような時、私は「もし、この木やこの植え込み、この傾斜がなかったら、これらの木や植え込みや傾斜をそこに位置付けたろうか」と自分によく問いかける。

一つ一つの物は、他のものとの関係において正当化されなければならない。私は、無駄な使い方は嫌いである。自然は放っておくと勝手ほうだいに伸びる。造園家の役割は、それをオルガナイズする事にある。特に土地不足の都市空間における仕事の場合、実際よりも広く見せるなど、場所を最大限有効に活用する事を考えなければならない。そのために、舞台や「フランス式庭園」で使われている遠近法を用いる。

  • 中心軸を見つける。
  • この中心軸の両サイドに、木立で「カーテン」効果をもたらし、遠くなるにつれて、その総体を小さくする。
  • また、遠ざかるに従って、再び土地を高くする。木を植える場合は、普通、傾斜面を作る。場所の最適利用を見定め、すべてを有効に活用する。
  • もし木があり、子どもがいる場合は、遊び道具の支柱として、木の幹や枝を利用する。その場合、木の位置や枝ぶりにあった遊びを選択する必要がある。そして、ロープ、チロリアン、ブリッジ、ブランコ、つり橋…などを設置する。子どもたちは、高いところで遊べるし、実際、高いところに上がるのが好きである。その上、スペースが一層有効に使えることになる。そこに骨組みを取り付ける場合には、私はよく弓なりに曲がり、枝分かれした栗の木を使う。こうすると、すべてが樹木の中に隠れてしまう。
  • 小屋を高いところに取り付け、そのしたを薪の収納場所にする。
  • うず高く積まれた木は、近所の騒音をシャットアウトするのにも役立つ。

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実際における造園

造園中、私は自分で設計した図面をほとんど手にしない。土地の実体に直面したとき、変更する箇所が必ずでてくるからだ。時には、造園中に構想自体を変えることさえある。

特に注意しなくてはならないのは、骨組み、地形、植物のマッス、花壇の配置、テラスの規模と形、並木道、ブロック工事など、固定される部分である。

多くの植物は相互に置き換えができ、植えてから数年間はすくすくと成長する。ただ、目に付くのは植物であり、緑のカーテンの役割を果たすのも植物であることを忘れてはならない。

この段階でもちろん、職人や機械が導入され、椅子職人、造作大工、土木工事業者、防水工事職人、左官、自動散水工事のための配管工、電気工、枝おろし職人などかなり幅広い職種の人たちの助けを求めることになる。

建設関係者、建築家、ブロック職人などの間で、時には意見が一致しないこともでてくる。造園家は、曲がっていたり、石が突き出ていたり、あるいはまた崩れかかった壁の方が美しいと感じる。塗料は、必ずしもすべての穴やくぼみをふさぐ必要はない。これらの壁の穴には、カノコソウ、苔、シダなどが生えてくる。外壁の塗り替えに失敗し、装飾の下敷きにならずにすんだ巨大な白い敷石を見つけることもある。施工者にとっては思わぬ果報である。

一般的に、常に現場に居合わせる必要がある。そして、一寸した事はわざわざ他人に頼んだりしないで、自分で処理するためには器用でなくてはならない。私は実習生と一緒に、植物や植木鉢を移動するなど、多くのことをこなす。もう少し右、いやもう少し左、それでもだめ…と、まるで壁に絵を掛けているような状況に陥る時もある。

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庭園のメンテナンス

メンテナンスとは、厳密な意味での園芸の仕事、すなわち整然とした庭園を保つための手入れである。しかしながら、かなり自由に手を加える事が可能である。流行や気分に応じて庭園を充実させたり、色彩や配置を変えたり…

庭園は、他のすべての芸術作品と同じ概念的ルールに従っている。庭園を研究する事は、直感がものをいう感覚を磨き上げる事である。

しかし、実現する作品は三次元の空間を考慮しなければならない。そして、その作品は、絶えず自然に影響され、決して完成することはない。庭園は季節ごとに変化し、観る人の心に季節感を感じさせてくれる。造園家は、自然が表現するあらゆる感情を、庭園を通して表現するアーチストである。一方、観る人は、庭園という作品の中に自分を見い出す。

自然思考の個性ある庭園を造ることを、読者の方におすすめしたい。

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ギィヨーム・ロベール
1959年生
造園家
ラ・セル・サンクルー(78)にて活躍