フレームに生きる映像世界

2002/10/10 Thursday 08:08 | Le Pont

あなたにとって時間という概念は、どのような物差のもとに成り立っているのだろうか。
あなたにとって1日とは?1時間とは?1分とは?1秒とは?
そしてあなたは1秒に満たない時間を、普段の生活の中で意識することはあるだろうか?

私の住むここは、極東日本。
そして私は現在、映像に携わる仕事をしている。

映像の世界の、更には日本のテレビジョン方式という物差で時間を捉えた時、
1秒は29.97フレームで構成されることを御存知だろうか。
但しこれはテレビジョンのカラー方式を区分する方式の一つ、NTSC方式においての数値だ。
ちなみに、色信号の多重方式の違いで分類される方式は3つで、フランスはSECAM方式であり、
もう一つはPAL方式である。NTSC方式以外の2方式は、1秒は25フレームで構成される。

それではフレームとは。
先程NTSC方式では、1秒は29.97フレームで構成されると述べたが、
小数点以下を扱うとややこしくなるので、ここでは仮に1秒を30フレームとしよう。
要は、1秒を更に30に細分化したその一つの単位をフレームと捉えるのだ。
あなたはパラパラ漫画を御存知だろうか。
まだ学生だった頃、授業時間を持て余し、教科書の一番隅に1ページ1コマずつ、
わずかに動かしながらイラストを書く。
何枚も書き終えたところで、頭からパラパラとページを送ると紙に書いたイラスト
が動いて見える。
いびつではあるが、確かに命を得たように動くのだ。
人の目の残像を利用した、アニメーションの原理である。話を元に戻そう。
1フレームをその教科書の1ページだと仮定すると、
30ページ書いたところでようやく1秒分の動きが作れると言う事なのだ。

映像の世界では、この1フレーム、つまり30分の1秒という瞬間の世界を厳密に管理する。
つまり映像を操るということは、それだけシビアな感覚が要求されるということのだ。
かくいう私も演出に携わる時、フレーム単位で映像を切ったり繋げたりする。
例えば、シーンとシーンのつなぎ目をOL(overlap)させる。
そのOL幅を20フレームで行っていたものを、
15フレームに変えたり、10フレームに変えたりする。
このようにして1秒にも満たない尺の世界で演出を施す。
しかし現実としてそういった数フレームの変化によって、目に見える映像の印象は異なってくるのだ。
コマーシャルのような短い時間の中で一つの世界観を確立せねばならない分野などにおいては
そのこだわりは最たるものだ。

そういった意味では、映像は、時間を具象化する術の一つなのではないだろうか。
本来具象ではない時間を、目に見えるという形で仮にも(間接的にも)表現できる一つの手段。
美しくも醜くも、我々の世界に留めて残す一つの方法。
無常だから、妥協ができない。
妥協が出来ないからこそ、面白い?それは映像業界に携わる個人の欲目に過ぎないだろうか。
生活の中の時間感覚と、映像に触れている中で捉える時間価値のギャップ。
留まることなく走り去るばかりの時を、あなたはリアルに感じているだろうか。

そこでもう一度あなたに問いたい。
あなたにとって1日とは?1時間とは?1分とは?1秒とは?

>>>このコーナーでは、毎回、空さんから送られてくるEmailメッセージを掲載したいます。






おすすめの記事