Cuisine japonaise et cuisine française: écoutons le chef Yamamoto

2004/10/17 Sunday 05:38 | Kaléidoscope, Le Pont

ARCK 日本料理って、簡単に言ってどんな料理ですか ?
CHEF 持ち味を生かした料理。旬の、海、野、山の幸を取り入れたものですね。

ARCK それは例えば、一回の会席料理の中にすべてふくまれているということですか ?
CHEF そうです。

ARCK フランス料理って、簡単に言ってどんな料理ですか ?
CHEF 素材よりソースにポイントがあると思います。昔の単調な盛り付けとは違って、立体感がでてきました。世界的な傾向だと思うのですが、軽くてサッパリした健康的な味に変化しています。ある意味日本料理に近づいてる気がします。
反対にブラッスリーやカフェは、30年前とほとんど変わってないです。
あと、昔はあまりなかった専門料理店が増えてきましたね。魚料理、郷土料理、赤ワインと肉料理、など。

ARCK フランス人はどんな味が好き ?
CHEF はっきりした分りやすい味が好きです。ただし、塩辛い味は受け入られにくいようです。
あとは、甘辛いものが好きですね。感触では弾力のあるものか、反対にクリームのようにとろけるものがお好きなようです。
極端な例をあげると、大根の煮物とか好きじゃないです。薄くて繊細な味付けが分りにくいようです。でも、それがクリームや液状になると食べる。

ARCK つまり、味って言うのは、香り、風味、舌触りを合わせたものなんですね。
CHEF 例えば、日本ではとろけるような軟らかい肉が好まれ、フランスでは噛み応えのある肉が好まれます。
どうしてこんな硬い肉が美味しく感じるのか、僕にとって、その感覚は不思議でもあります。

ARCK フランス人に寿司が受けてることはどう思いますか ?
CHEF ただの流行だけではないと思います。
生魚はたんぱく質やビタミンもあるし、魚の脂は体にいいし、酢飯の酢も体に良く、ヘルシーだと思います。

ARCK 寿司は日本料理で一番知られているものですが、それ以外で根付きそうなものってありますか?
CHEF やっぱり、やきとり、天ぷら、ですね

ARCK お好み焼きなんかはどうでしょう ?
CHEF 以前パリにお好み焼き屋があったんですけれど、店を閉じられました。時間がかかるのと値段が高すぎたようです。でも、フランス人には受ける味です。

ARCK 日本とフランスの素材の違いは ?
CHEF 全部違いますね。

ARCK 魚について
CHEF 白身魚はおいしくないです。弾力がなく大味。素材にしては高いです。
肝心なのは、お店に入るまでの段階で、魚の扱いが悪い。乱暴に扱っているので、身が崩れてしまうんです。
サーモンは日本よりおいしいと思います。それは一口に言うと、海流のせいじゃないでしょうか。サーモンはスコットランドの天然のものが特においしいです。おいしいサーモンっていうのは、身が赤く、弾力があり、油がのってるものです。
マグロは、地中海のものはおいしくないです。油はのってるけど、身が締まっていないんです。泳がせないとおいしくならないです。トルコの本マグロはおいしい。日本でも、スペインやトルコ産を使っている。
たまにおいしい本マグロが入ります。これは、油がのっていて、身が引き締まっていて、色が鮮やかで、味が濃いのにさっぱりしているんです。

ARCK 肉について
CHEF 日本では牛に栄養を与え、最高の状態に育て上げます。フランスでは自然に近いんです。そのまま。
フランスの肉は堅いです。子牛は価値があります。やわらかく、味が淡白なんです。私は大人の牛肉が好きですが…。
ランジスの市場に行って、つくづく感じるのは、肉の種類が多いこと。消費者にも、いろんな種類の肉を食べたいという欲求があります。肉と赤ワインが非常に合いますしね。なんと言ってもワインの国ですから

ARCK 野菜について
CHEF 大味だと思います。フランスの野菜で一番気に入ってるのが、アスパラソバージュ。これは絶品です。日本に はないものです。日本料理、西洋料理、中華料理、イタリア料理、なんにでも使えます。火を入れすぎず苦味を生かして料理するといいですね。クルジェットも 各国料理に使える野菜です。天ぷら、サラダ、煮物などです。来仏したばかりの頃、思っている材料が手に入らず、いろいろとためしてみました。アーティ チョークは、蒸し物にしてウニを詰め、吉野葛とだしをかけました。フォアグラも和食に合うんです。日本のだしを使って、フォアグラとウニとアーティチョー クの料理を作りました。

ARCK フォアグラとだしが合うのはなんだかふしぎですね。
CHEF 西洋カボチャ、アンディープなどは、和食に難しい。
和食に合うどうかは、漬物にすると分ります。漬物にしておいしいものは、まず使えます。セロリの漬物なんか、おいしいんですよ。

CHEF 世界で一番まずいキノコは、シャンピニョン・ド・パリ(日本で言うところのマッシュルーム)!
何にでも使えて、安くて、扱いやすいけれど、おいしくないです。魅力がないですね。
ARCK 西洋松茸と言われるのに ?
CHEF あくまでも脇役。でも、フランスはキノコがいろいろ種類があっていいです。手頃でおいしいのは、ジロール茸。 焼いても、煮ても、おいしいです。

ARCK 山本さんが、フランスであっても絶対にこれだけは譲らないという点は ?
CHEF 自分の味を譲らないです。
もちろんお客さんが喜ぶ味をってことですけど。日本人とフランス人で多少変えてるんです。フランス人は量的なボリュームとはっきりした味を求めている。それに答えるようにしたり、日本入には繊細な薄味にしたり、調節しています。

ARCK 反対にフランスだからこそできる日本料理ってありますか ?
CHEF フランスの材料を使って日本料理を作るってことがとても勉強になりました。

ARCK 味覚の違いに関するおもしろいエピソードってありますか ?
CHEF とんかつソースやテリヤキソースで寿司を食べるフランス人。
中国人経営のすし屋では、甘いソースを出してるらしいんですけれど、それがすしやさしみにっけるもんだと思ってるようなんです。いくら食べる人の白由とは言っても…。
うちでは、すしや刺身を食べてるお客さんには、頼まれても、とんかつソースやてりやきソースは出しません。

ARCK フランスの日本料理人は本当の日本料理の味を広げる役目を担ってらっしゃいますよね ?
CHEF 世界で一番おいしいと思っている日本料理を、さらに知ってもらいたいです。

ARCK 山本さんにとって「味」とは ?
CHEF 僕にとっては、おいしいものを作るってことでしょうか。
真心を込めないと、いくら高い材料を使っても、いくら手をかけても、おいしくはならない。人が満足する「味」にはならないと思うんです。「おいしく食べさせてあげよう!」という気持ちを大切にしています。
好き嫌いあるけれど。その点は難しいんだけれど、今まで食べた事がないからと、敬遠していたものを、そこを乗り越えて食べてみて、「とてもおいしかった」って喜んでくれると、本当にうれしいですね。
味に関しては、本当に喜んでくれてるのか、お世辞を言ってるだけなのか、よく分りますから。
お客さんが喜んでくれて、自分でも良くやったなと思うとき、感謝と満足を感じて、さらに100%への料理へと向かう意欲が出ます。
味の深み(料理の可能性)って、まだまだ拡がると思うんです。もっといろんな味が出来てくる。地方にちょっといくだけで、いろんな素材に出会えますし。これからも「味」は発展していくでしょう。
僕も、和食の基本は守りながら、新しい味を取り入れていきたいです。

プロフィール
山本国男 やまもと くにお
料理人 東京赤坂の日本料理店料理長を経て、1972年に渡仏。パリの日本料理店で料理長を務める。






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